出足平峠
低い峠を越えると、海側の森が切れて、草の斜面のかなたに開ける余市の町から小樽方面の山々にかけての眺めが眼をたのしませるが、すぐ下に見えてくる墓地を過ぎると、ふたたび両側とも森に閉ざされる。
そして間もなく道が180度急転回するところが出足平峠。
「でたりびら」という響きが、何ともいえずいい。
このために北海道 旅行にきたほど、なぜか気に入っているのだ。
回転して道が出足平川の谷へ下りはじめると、森は一段と深く、しっとりと暗くなる。
昔はここが国道でバスも通っていたというのはほんとうなのだろうか?と思ってしまうほどの山道。
しかし、頭の真上は明るく、林空にさしかかる高木の葉のむらがりが、空のまぶしい光を透かしてつくる、シャルトルーズグリーンの輝きとメドゥグリーンの磐りとの、自在なモザイクが見ものであった。
谷を渡ってもう一度180度転回する部分は、雪が融けたばかりのドロドロ道である上、倒木でふさがれたりしていて、少々難渋だったが、それはそれで興趣の一つ。
その先ではしばらく現国道と接近して走ったりゴミ処理場の裏を通過する区間があるけれども、やがてまた深い森となって、潮見町までそれが続く。
さっきよりもさらにまた深く暗く樹の香りの濃い森をうねる、湿った道の感触が娯しい。
そうしてそれに、白岩町の西南方から森の枝のシルエット越しに望まれる鳥帽子岬-鉛筆の先さながらに尖る岩峰とその南に並ぶラクダのコブに似た二つのピークや、轍道の中央の草のベルトに競い咲くスミレ、路傍の林床からのぞくシラネアオイ、ヒトリシズカ、ネコノメソウなどの花々が、軽やかなリズムを添えてくれるのである。